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富山の未来を考える時、奇をてらった特別な姿は、しっくり来ません。
自然環境や食に恵まれた富山を守りながら、失われつつあるコミュニティ機能を再構築し、子どもは夢を描き、若者は夢を実現し、大人は喜んで働き、高齢者は生きがいを持てる、古き良き姿を、今の時代にあった形で取り戻していきましょう。
私は螺旋的発展という言葉が好きです。手紙がメールとなったように、馬車が自動車になったように、同じ目的を持つものが、一周してくると、時代に合わせて形を変えて、一段上に発展していることを指しています。
富山にとって、一段上はどんな姿なのか、一緒に考えていきましょう。

実現したいことは山程ありますが、まずは5つのビジョンに整理しました。皆さんと意見を交わす参考材料としてご覧ください。

衣・食・住・足・守

日本には「衣食住足りて礼節を知る」という言葉があるように、生活の基礎的な環境整備は欠かせません。加えて、この時代には移動手段(足)と安心安全(守)が揃うことが求められます。 学生時代から凡事徹底(ぼんじてってい)という言葉が好きです。当たり前のことを極めることが圧倒的な強みになるという意味ですが、「当たり前のことを大切にしないで、際立った成果を残せるはずがなかろう」と私は解釈しています。

【衣】全ての人が、清潔で自分らしい衣服を身にまとうことが大切です。衣服の乱れは、心の乱れ、すなわち生活の乱れに繋がります。特に子ども達にとっても、制服を含む日頃の身だしなみを整えることが、健全な心の成長と直結することは言うまでもありません。日常生活に困難を抱える家庭に対しても、必要な衣服に関するサポートを求めていきます。 また、日本の伝統である着物についても、その文化が広まるための活動にも協力しています。

【食】健康の分野では予防医療が推進されていますが、そもそも「医食同源」と言われてきた通り、適切な食生活があれば、多くの病気は防ぐことができるそうです。私自身、大学時代に健康分野を学ぶ機会を得てから、水や米、大豆などを中心とした食生活に切り替え、極めて健康な体を保つことができています。

特に子ども達にとって、食生活は自らコントロールしづらい状況があるため、大人たちが正しい食生活に対する知識を持ち、また行政サイドからは給食の見直しを進めていくことが必要です。極端な意見かもしれませんが、給食で牛乳やパンを提供する割合は極力減らし、しっかりと米食を中心軸に据えることが富山人のパワーアップに繋がると考えています。

【住】富山で生活する拠点としての住まいには、戸建て、マンション、アパートに加え、最近ではシェアハウス等の選択肢も増えてきています。富山には、富山に合う住まいの形がありますが、何より大切なのは、住居の周りにあるコミュニティです。隣近所の付き合いが疎かになってきた現代において、富山では昔ながらの「ご近所さん」の環境を取り戻すことができると考えています。特に子育てする若い夫婦にとっては、核家族での生活が増えている中で、地域コミュニティの支えは必要不可欠です。空き家を活用したコミュニティカフェの増設や、伝統的な祭文化を起点とするコミュニティの再構築を優先して取り組みます。

【足】インターネットが3.0へ、産業革命が第4次へ進む中、移動手段のアップデートが遅れています。高齢化が進む一方で、高齢者の免許返納率は上がらないまま、高齢ドライバーによる死亡事故が多発していく悪循環を見ながら、根本的な公共交通の見直しが喫緊の課題です。国内でもライドシェアやUber等の新サービスが試用されているので、富山でも次代の移動手段について積極的に取り組む必要があります。簡単な方法としては、スマートフォンのアプリで、富山県内の移動手段に関するデータを一括管理して、スムーズに乗り換え移動ができるように整備すること等が考えられます。

【守】誰よりも守るべきは子どもです。学校ではいじめ・体罰を無くし、家では心身・性的な虐待を無くし、安心して成長できるベースを築く必要があります。既に家庭環境の悪影響によって、施設などで過ごす子ども達には、将来の夢・目標を持って生活していける環境が必要です。また、少数者として様々な困難に直面している人々を全力で守ります。県議会では、性犯罪被害者に対するワンストップ相談センター開設や、障がいのある人が安心して生活できることを目指す条例制定を通じて、その土台作りを進めています。

結婚・出産・子育て

婚活実態調査で、婚活サービスを利用して結婚したという人の割合が11.3%と、1割を越えたそうです(ブライダル総研調べ)。そもそも恋愛や結婚に関する考え方が大きくアップデートされて、これまでの常識を押し付けていては、若者が結婚に興味を持つことは難しいでしょう。
まずは結婚があり、出産があり、子育てがあるという当たり前の順序それぞれに対して、必要な政策があります。特に出産については、県議会でも不妊治療や不育症治療に対して全国有数の支援策を構築してきましたが、出産適齢期と言われる現実を向き合うことから始めなければ、万能ではない不妊治療や不育症治療に対しても誤った認識を持つことになりかねません。
そして子育ての環境も大きく変わってきていることを行政サイドも認識して、いまだに第3子の支援策を拡充していくといった非現実的な政策から脱却させなければいけません。第1子から支援策は必要ですし、子どもが生まれることは、それこそ地域コミュニティで盛大に祝い、支えていく意識啓発も行政の仕事だと考えます。

看護・介護・医療

国の予算で最も大きな比重を占めるのは医療費です。政治家にとっても、その比重は高く、医療福祉関連の公約は極めて多く、そのほとんどが「利用制度の充実」「介護サービスの充実」と、サービスを受ける側の視点で発信されています。いま、本当に問題なのは、医療・看護と介護を提供する「働く側」の環境整備ではないでしょうか。特に介護職において、長時間労働や低賃金、そして重くなり続ける業務の責任、さらには外国人技能実習制度との兼ね合い、それに伴う業務範囲の拡大などで、どれだけ人材を育成して、資格を与えても、働き続けられない職場環境がネックとなっています。まずは働く側が充実した生活を送れるように改善することが、結果として、心地よく行き届いた医療・介護サービスへと繋がります。

就職・天職・副業

まちを変えるのは若者と馬鹿者とヨソ者だと言われます。これは「起爆剤」としては有効な考え方ですが、実際に富山で住み暮らし、まちを活性化させるには「有力で地元に愛を持った者」が必要です。UIJターン就職を考える時に、大きな壁となるのは就職先です。中小企業の経営者は、ハローワークに掲示されない採用枠を多く持っています。一方、転職サービス等に登録していない、潜在的なUIJターン就職の候補者も、多数いらっしゃいます。そのマッチングにこそ、行政のサービスが求められます。県では有楽町に加えて、大手町にも就職相談窓口を開設することになりましたが、まだまだ考えられる政策は多くあります。
中小企業が発展するためには、県外・海外で活躍する実績のある人材を採用し、企業の業績を改善、成長させる。そこで生まれる利益によって、県内で新たな雇用を生み出す。この順番が重要です。助成金で多くの雇用を生み出したように見えても、企業の業績に好影響をもたらす人材でなければ、1年限りの一時雇用で留まるでしょう。特に富山出身者は、地元に強い愛着を持っています。活躍するフィールドを適切に用意できれば、富山にとって、Uターンした人財ほど心強い味方はいません。

起業・承継・海外

事業者の9割9分は中小企業にも関わらず、納税・雇用を多く生み出している経営者の声は、政策に反映されていない現状があります。中小企業での勤務と、起業を経験してきた議員として、企業と行政の距離を縮めることが、長期的な富山の発展には欠かせない関係づくりであると考えます。
中小企業の経営課題を集約すると「人材」であり、それを3つのカテゴリに分けると、「1.起業する人材」「2.経営する人材」「3.未来を創る人材」となります。「1.起業する人材」が富山で増えるためには、チャレンジして失敗することを前向きに評価する環境づくりが必要です。起業して失敗した人は落伍者ではなく、挑戦者です。再チャレンジできる支援体制と、起業後に失敗しないようにするための支援体制の両軸が必要不可欠です。「2.経営する人材」は、創業100年を越える企業が世界一多い日本において、事業承継する後継人材が最も必要となります。M&A等の存続方法もありますが、できるだけ社内で次世代の経営者が育つ環境を作り、同時に県外からの就職先として企業経営者という選択肢がとれるような仕掛けを進めます。「3.未来を創る人材」が能力を発揮するのは海外市場へ進出する事業です。人口減少する日本において、その市場で業種バランスが変わることはあっても、全体のボリュームは減り続けます。そんな環境下では、海外市場へ打って出ることが求められますが、それには勇気ある、また経験ある人材が不可欠です。海外市場を創り出すためのサポート体制を行政サイドでも進めます。目指すべきは、国内から海外への、特に東アジアへの経由地であり、海と空の両面から貿易をサポートし、教育県として海外からの子どもも受け入れられるダイバーシティな先進教育を行う都市です。そんなポテンシャルを備えた富山であることを、改めて意識し、そのベクトルに基いて政策を展開していく必要があると考えます。